信頼できるもの

 

母の知人である、俳人・今井豊氏のもとを尋ねました。

 

今井氏が、今夏、明石市内に「俳句資料館」を開設されたと聞いて、母のお供です。

 

この資料館には俳句に関する出版物が約2万冊並んでいるそうです。

 

母も蔵書を選別しては寄贈していたので、一度はこの場を訪れ、彼と言葉を交わしたかったようです。

 

私が今井氏に初めて会ったのは、おそらく10代後半…彼が20代前半だったかと。母が主宰していた同人誌のメンバーのお一人だったと記憶しています。

 

ちょっとお邪魔…のつもりが、つい長居してしまいました。

 

私ではわからない昔の俳人の名前を書棚に見つけては、ふたりで楽しそうに話をしていました。

 

ふたりの間では、ツーカーのように対話が成り立っていているのを目の当たりにして、私は普段母の相手になっているようで、実は全く足りていなかったんだなあと、感じました。(もちろん、俳句面で)

 

 

今井氏は、俳句歴約50年だそうです。この資料館に拠点を置く「いぶき俳句会」の共同代表で、県立高校の日本史の教師を定年まで務められたそう。中学生の頃に俳句を始め、高校入学後に同人誌に入会。20代後半から黒田杏子さんに師事しておられたとのこと。

 

・・・・・・

 

「母は俳句をやれとは、一度も言ったことないんですよ」と、おしゃべりの中で私が言いました。

 

そう、一度も強制されたことのない俳句。でも、いつも身近で、いちばんに母の作品に触れていた私。

 

母は「俳句なんて人生の何の役にも立たない」とか、「したくてしている訳じゃない」と言いながら、いつも俳句の話をします。

 

でも、ここ最近二度ほど「俳句のことを信頼している」と、口にしました。この日も……。

 

家に戻り、一人になって、私が信頼しているものは、と考えたら、私の場合はヨーガだなと思いました。

 

祖父母も俳人であり、幼い頃から俳句に触れてきた母のあとを追って、なぜ俳句ではないのかと、自問自答することは幾度となくあったし、今からでも遅くはないと思うこともあります。

 

意識の矢印を内に向ける、その方向性は俳句もヨーガも同じだと、母とよく話もします。

 

ですが、私は自分の内なる世界を発現させるだけではなく、私以外の誰かに、ヨーガという方法を手渡したいのです。「生きる」ことに関して、いろんな意味で腑に落ちる経験をさせてもらったから。

 

私も若者ではありませんから、有り余る時間やエネルギーがあるとも思っておらず、そうであれば、この限られたものは、ヨーガとヨーガを伝えることに使っていきたいと、やっぱり思ってしまうのです。

 

それは、ご先祖様から渡されたバトンの私なりの進化なのかも知れません。

 

小さな私ですが、私にとって信頼できるもの、この世に残したいものがヨーガなのだということです。

 

 

ご案内: 資料館の蔵書はかなり貴重なものが多く、俳句に興味関心のある方なら、一度は訪れたい場所です。貸し出しはしておられませんが、どれも手に取り読むことができます。「すべての俳人に、またこれから俳句を始める人にとっての開かれた場所を目指したい」とされています。市内で進む読書の拠点づくり「明石まちなかブックスポット」の一つでもあります。山陽電車「人丸前駅」から南へ1分。開館は午前9:00~午後5:00 今井氏 090-3827-2727(事前予約が必要)