母らしい

 

このずらりと並んだ俳句誌の表紙をデザインしたのは母です。東北出身の亡き俳人・佐藤鬼房氏から、是非にと依頼されて以来、故人の遺志を胸にずっと制作してきました。

 

その殆どは紙、布、植物を使ったコラージュですが、デザインを客観視するために、母は私と弟を使いました笑 デザインの素材を目の前に、よく「ああでもない、こうでもない」と話し合ったものです。

 

この数年、母はその仕事から、いつ身を引こうか思案していた様子ですが、過日ついに主宰者にその旨を手紙に書いて送ったと話していました。その顔はすっきりした様子でした。

 

なんと、いつの間にか二十数年の月日が流れていたようで、ある日実家を訪ねましたら、母は手元に残っている冊子を絨毯にずらりと並べていました。どのデザインも勿論私も覚えています。

 

亡くなられる前の佐藤鬼房氏から、直接依頼されたからこそ、この仕事を無償で引き受け、真摯に向き合い続けてきた母。

 

有難いことに、主宰者から今までのお礼を頂いたそうなんですが、その一部を「寄付に」と送ったと聞いて、「ああ、お母さんらしいな」と思った娘でした。そういう精神を私も見習いたいです。