ヨーガとタントラ no.4

 

*** ハートオブヨーガと出逢って

 

はじめ、私はスタジオで伝える者の責任として、ハートオブヨーガを「学ぼう」と力んでいたと思います。

 

生徒さんに対しては、正直に「私も最近練習法を変えたばかりなので、皆さん一緒にやってみませんか」というところからスタートしました。それまでのヨーガをともに練習してきた彼らは、驚いていました。正直なところ、私も彼らも半信半疑でした。

 

けれども、自分の呼吸に合わせたシンプルな練習をともにし、訪れる感覚をシェアすることを積み重ねると、「心地よさ」が私たちの内側に拡がっていることに、気づくようになりました。それは、最後の屍のポーズの感覚や、練習後の部屋に漂う空気感となって表れていました。

 

その何とも言えない不思議さを享受しながら、自己練習を継続するとともに、私はMark Whitwell先生の「ヨーガの真実」を読み、ハートオブヨーガについて発信している人の言葉を拾っては、ノートに書き写していた時期がありました。その頃になると、「覚えなければならない」からではなく、「私のこころが自然に求めている」に変わっていました。

 

そして、2014年秋、京都で開かれたハートオブヨーガの集中講座に参加し、初めてJ.Brown先生のヨーガを受けました。それ以来、彼に師事しています。はじめ、Mark先生の代理を頼まれた彼でしたが、その当時から、現在もなお、日本の生徒に親身に寄り添い続けてくれています。彼の熱い探究心、現実的な考え、ヨーガの教えに基づいた的確で思いやりに満ちた応え、家族思いなところを、心から敬愛しています。

 

(2014年秋 京都で開かれたハートオブヨーガの集中講座にて J.Brown先生と)

 

 

 

(私のノートの写真。そして、こんな言葉を記しておきます。「ヨーガのマニアにはならないで」これも、大好きな教えの一つです)

 

ハートオブヨーガとは「ヨーガの本質」「ヨーガの真実」「ヨーガの真髄」などと訳され、私たちの先生、T.K.V.デシカチャー先生の本のタイトルにもなっています。私は、人生のどん底で掴んだ始まりのヨーガから、この学びに辿り着くことが出来ました。それ以来、この練習法とその根底に流れる教えを大切にしています。(T.K.V.デシカチャー師:現代ヨーガの父、T.クリシュナマチャリア師のご子息)

 

その教えは、私のヨーガの未完成なパズルの、最後の1ピースが全体の一部として収まるような、安堵感をもたらしてくれました。それは、先生方と仲間たちとの関係性もあったからこそのことでした。

 

個人的ないのちとしての体験を、自分の暮らしの中で習慣的に行ってきた結果、私は私自身との対話を積み重ね、その時々の「心地のよさ」や「違和感」など、自分の正直な感情や感覚をそのまま受け入れられるようになりました。その気づきを、実際の人生の場面でどんな風に生かしていけば良いのか、それらが私の選択・行動などに現れるようになりました。

 

例えば、家族や友人に対する言葉かけや態度が変わりました。何かを働きかける前に、一度自分の内側を見直してから発するような感じです。相手のことを本当に信じることとはどういうことなのかを考えたり、伝わりやすい言葉を工夫したり、タイミングを待ったり、相手の心を尊重できるようになりました。まわりとの関係性が良くなることで、その恩恵が自分に還ってきて、私自身が心地よく過ごせることが多くなったのは確かなことです。(でも、失敗することもありますよ。ニンゲンだもの笑)

 

さらに言えば、蓋をして、大丈夫と思い込もうとしていた痛みや苦しみを、「まだそこに在ったんだ」と認めて、時間をかけて癒してきました。「時間をかけて」ということがとても大切でした。そうすることによって、前とは違う角度で、かつて起きた事柄を観ることができ、内省したり人を許すことが生まれてきたのです。その結果、今までの人生で起きたひとつひとつの事柄に、意味があったと思えるようになりました。そして、どうしようもないことはそのままにしておくことも、できるようになったのです。

 

それは、「真の意味で」自分と関係を結べていなければ、なかなかできないことです。もし、私が自分の本音と向き合っていなかったら、変なカタチで感情を押し殺したり、自分を責めたり、必要以上に頑張らせてしまったり、ピントが合っていないようなことが起きるのだと思います。かつての私のように。

 

私はこの人生を歩いていくために、今私がいる場所、自身の状態、これからの方向性などを見極めるために、ヨーガをしています。そんな風に言えるのは、ハートオブヨガの学びや練習法がタントラの要素を色濃く反映させた本来のヨーガなんだと、今なら説明することが出来ます。

 

今回のヨガのたねの講座でも、参加者から積極的な意見や質問があがりました。時間内にとても収まりきらないテーマではありましたが、それはひとの数だけ、それぞれの個性があり、人生があるからだと思います。

 

このテーマをもっとヨーガの世界で取り上げていくべきです。いつも核心的なテーマを設定するヨガのたね運営チームはすばらしい存在です。私たちは、本当に大切なことを、もっと話し合えると良いと思います。

https://yoganotanej2023.peatix.com/

 

J先生は言葉を尽くして、タントラのことをお話してくれましたが、最後に「タントラとは、自分自身が自分自身の精神的な道を自分自身で築き上げていくこと」と表現されました。

 

今まで得た学びをもとに、私も「ヨーガとタントラについて」以下のように表してみました。

 

「個人的ないのちの体験としてヨーガを重ね、自分のいのちと対話をし親密性を深めてゆくと、そのプロセスのうちに、統合が起きてきます。ハートオブヨガ(タントラヨーガ)は、自分の呼吸に「私たちのいのちは宇宙の秩序そのものだ」ということを教えてもらえる練習です。その壮大な気づきを自分のハートの内側に携えたまま、現実的な世界において生きること。それがタントラなのです」(Naoko)

 

私事ですが、この春より、私たち夫婦の暮らしのスタイルが大きく変化します。夫とふたりでこの数年、充分に話し合ってきました。その根底にハートオブヨガの恩恵が在ることは間違いありません。社会的な概念に囚われず、私たちが望む人生を歩くために、タントラのエッセンスを含んだ包括的なヨーガは私たちを勇気づけ、決断に導いてくれました。

 

私に多大な気づきをもたらしてくれたハートオブヨーガの教えと、素晴らしい先生方と仲間たちに、そして私自身のヨーガのプラクテイスに心から感謝を捧げます。

 

 

朝霧カタツムリ

 

 

 

(T.K.V.デシカチャー先生のThe Heart of Yogaをもとに、私たちはヨーガの経典パタンジャリのヨーガスートラを学んでいます。☆ヨガのたねの講座にて)

 

講座記録 :

 

☆ 多くのヨーガは生命の「超越」を目的としている。タントラのみが「統合」を教えている。

 

超越:今の自分を浄化し、自分以外の他の者にでもなろうとするかのように修行をし、さらなる高みに上がらんとする。(俗世から離れる)

 

統合:すべて必要なものは内側に揃っていることに気づき、与えられた命を大切に、日常を生きる。 

 

☆ 研究や議論も有意義ではあるが、実際の「自分への寄り添い」に学術的な見解は必要かという視点について

 

【J先生語録 ~ 参加者との対話の中で】

 

* J先生はいつも家族とのエピソードをお話してくれます。二人の娘さんのもめ事がもとで家族会議になった時、J先生の言葉で上のお嬢さんが泣いて心を開き、新しい関係性に変わることが出来たそうです。「私が大切にしてきたヨーガや取り組みが、その時ひらめきとなって、娘にかける言葉をもたらしてくれた。関係性はともに創造していくもので、私は私でありながら、すべての中に一部として存在しているんだ」

 

*「先生がヨーガの目的や、意義、その価値について、よく考えていることは大切だ。言語化しなくても、こういう考えを持った先生が部屋に現れるだけでも、人に伝わるものだよ。自分が何を探究しているのかによって、家族や友達に伝わることに違いを生む。言語化するのは難しいね。でも、伝えるためのチャレンジすることには意味があると思っているよ」

 

*「すべてあるというところから始めるのです。私たちは何にも欠落していないのです」

  

*「自分が生きて呼吸していること自体が宇宙の秩序です」

 

*「母として、妻としてなどという、社会的な存在としてよりも、ただ自分は脈動する心臓と呼吸なんだと認識すること」

 

*「source(源)に自分の意識を合せていくのはいいね。私たちは源から来て、またそこへ還っていくんだから」

 

* 「タントラ的なヨーガをすることで、柔らかい気づきが多くなったよ。柔らかさ、繊細さを持つことは、ぱんぱんに詰め込まれた視界の中にいるのではなく、もっと離れたところから、神の恩恵をもって自分を見ている感じなんだ」

 

*「目的をどこに据えるか、なぜヨガをするのかを意図することによって、自分に何が起きるのか、違いが生まれてくる」

 

*「タントラとは、自分自身で、自分自身を方向づけて、自分の道を見出し作り上げていくもの。何か外側の権威が作り上げたものに乗っ取って、それに乗ったら辿り着けますといったことではなく、すべて自力で自分の内側に見つけるもの。タントラの先生というのは、より一層友人に近い感覚で人と接するのであって、何か権威がある人が上から下へ授けるというような、そういう仕組みにはなっていない」

 

 【その他 講座で出てきた言葉】

 

 *「ヨーガというのは、関係性なのです」(T.K.V.デシカチャー師)

 

*「あなた自身があなた自身の、メソッドのないメソッドを自分で創り上げていくのがタントラです」(J.クリシュナムルティ師)

*「ヨガは行為における巧みさである」バガヴァッド・ギーター第三章

 

 *アミニズムについて (自然信仰、万物に魂や精霊が宿っているという考え方)

 

 

 

次回は4月2日 9:00~11:30まで 

テーマは「ヨガと人生の段階」です。

 

人生のステージが変わると、身体も変わるし、人間関係も変わる。それに伴い、ヨガの練習の内容、質も変わっていくでしょう。J先生の長年の経験から、変わっていく自己とともにあること、その都度生じる痛みや苦しみと向き合い、癒すこと、そして新たな可能性を開いていくことについて、探究していきます。

 

ヨガのたね講座↓ (私からお繋ぎすることもできます)

https://yoganotanej2023.peatix.com/

 

☆ 見逃し動画のアーカイブチケットも購入できますよ。途中参加もオッケーです。一緒に探究しましょう!